第一回目のインタビューは行政としてシックハウス対策に取り組んでおられる横浜市衛生局生活衛生部生活衛生課長の宮崎保典氏にお願いしました。(写真右)

・インタビュアー/シックハウス対策研究会 代表 片倉宏


[片倉] 今回はお忙しい中、貴重な時間を割いて頂いてありがとうございます。 早速ですが、はじめに、横浜市衛生局のシックハウス対策について教えて下さい。
[宮崎] 横浜市内18区の福祉保健センターでは,市民からの相談に応じて訪問調査し,ホルムアルデヒド等の簡易測定等を行なうことによって,効果的な換気方法などの住まい方のアドバイスをしています。また,そこで実施されている母親教室等でもシックハウス対策の講座を開催し,知識の普及啓発を行っています。
[片倉] その簡易測定はいつ頃から行なっているのですか?
[宮崎] 平成11年4月から全区で,ホルムアルデヒドやダニアレルゲン等の簡易測定を無料で実施しています。
[片倉] まず原因を究明し、その対処方を模索するというプロセスを踏むには、簡易測定とアドバイスは最初における最も重要な作業ですね。ここまででも行政が行なってくれるというのはありがたい。他県に住む方から見ると神奈川県、特に横浜市はシックハウス問題への取り組みがかなり進んでいるとよく言われますが、その背景は地域性なのでしょうか、または行政が進んで取り組まれた結果なのでしょうか、それとも住民意識の高さから要求されたものなのでしょうか?
[宮崎] 横浜市は,都市への人口集中とこれに伴う住宅建設が急激に進んでいる都市です。このため大規模なマンションをはじめとした新築住宅が数多く建てられています。シックハウスは比較的新しい家で問題が生じることが多く,ダニ,カビの問題をはじめとして,たくさんの相談が寄せられている状況です。横浜市としては,これらを多数の市民の声としてとらえ,シックハウスに対し積極的に取り組んでいく必要があると考えています。
[片倉] 確かにシックハウスは新しい住宅に多く見られる現象ですから、住宅建設の数に比例して相談件数が多くなるのは理解できます。それにも増して、やはりこの問題に対して市民と行政の意識の高さも私自身感じています。これは講習会などに参加させて頂いた時に強く感じましたね。例えば、今までにダニアレルゲン調査や室内空気汚染物質調査を行われたようですが、その結果を市民に対してどの様な方法で公開しているのですか?
[宮崎] 調査結果をまとめて,パンフレットを作成し,講習会や相談窓口の資料として活用しています。また,市のホームページでもパンフレットを掲載しています。 講習会については,家にいる時間が長い妊婦や乳幼児は特にシックハウス対策が必要と考えていますので,福祉保健センターで開催されている母親教室や地域育児教室等で空気中に含まれる化学物質やダニアレルゲン等に関する講習会を実施し,効果的な換気方法や適切な加・除湿器の使用方法など,調査結果に基づいた住まい方の改善策についてアドバイスしています。
[片倉] ところで、住まいからの健康被害を訴える相談件数は全国でも最近増加傾向にあると聞いていますが、横浜市の場合はここ数年でどの位の件数と推移があったか教えて戴けますか?また、最近の相談内容の特長と傾向があればお教え下さい。
[宮崎] ホルムアルデヒド等の室内空気中の化学物質に関する相談は年間約150件,ダニアレルゲンに関する相談が年間約100件です。相談件数は集計を開始した平成11年度以降横ばいですが,今年度は,以前はほとんど相談がなかったホルムアルデヒド以外の揮発性有機化合物,例えばパラジクロロベンゼン,トルエン,キシレン等の相談が寄せられるようになってきています。
[片倉] それはとても興味深い話ですね。ホルムアルデヒドばかりが有害化学物質の代名詞のように思われていますが、その他にも住宅内には様々な化学物質が存在しますからね。パラジクロロベンゼンなどは初めて耳にする方も多いと思いますが、これらの聞き慣れない物質に対する相談が寄せられているとは驚きです。これも地道な啓蒙活動の現れではないかと思います。
最後になりますが、横浜市は全国でもNPOの活動に対して高い認識を持った行政だと伺っています。私達シックハウス対策研究会もNPO法人として現在内閣府へ申請中ですが、衛生局からはNPOに対してどのような働きを期待されますか?
[宮崎] 福祉保健センターでは,訪問調査時に効果的な換気方法など,住まい方の改善をアドバイスしています。しかし,リフォームの必要がある場合など,住まい方の改善策のみでは解決できない事例も多くあります。 行政としては立場上,具体的な設計施工店,空気清浄機などの商品等を紹介することができません。この点,信頼のおけるNPO法人を紹介できるならば,具体的に問題を解決することができるのではないかと考えています。 NPO法人と行政は,お互いにできることとできないことを明確にし,情報交換を通じ,できないところを補い合うことによってより一層,シックハウス対策が充実するものと思われます。
[片倉] 今の話をお聞きして、私達のやるべき事が再確認できた思いです。私達シックハウス対策研究会は発足間もない事もあり、設計施工店の会員企業はまだ少ないのですが、幸いにして熱心に取り組んでくれている研究者メンバーが居ます。そのおかげで製品毎の化学物質分析データ等も蓄積されてきていますので、更なる充実を図って協力したいと考えています。 今日は貴重なお話、ありがとうございました。

  【後記】
相談内容がパラジクロロベンゼン,トルエン,キシレン等にまで及んでいるとは、この問題に対する消費者意識も確実に高まっているのであろう。パラジクロロベンゼンはタンスの中などに用いる防虫剤に含まれる化学物質であるが、昔はあの防虫剤の臭いを何の疑問も持たずに嗅いでいたものだ。ただ昔と違う点は、住宅の高気密化などにより室内全体の化学物質濃度が高くなった事と、住宅の密集化による窓を閉め切った生活環境の変化などが問題を深刻化させている。タンスの中の僅かな防虫剤をも意識しなくてはいけない時代になったということだ。シックハウス問題はなにも住宅建材だけではなく、生活日用品にも起因するものなので、簡単な対策方法としてまず身の回りの日用品の見直しと窓開け換気から始めてみてはどうだろうか。

 


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