報告を受ける中で、何らかの建築行為の後に症状を訴える方が圧倒的に多い事実を考えると、新築、リフォームの計画段階において設計・施工会社と使用建材について慎重に吟味することが大事です。
その際、設計・施工業者は建築のプロであっても、シックハウス問題についてはほとんどの方が素人であるとまず認識して下さい。
これは、その業者が勉強不足と言うよりも、この問題の社会的な周知徹底が未整備である事による対応の遅れだと言えます。住宅確保促進法でようやく空気環境の性能表示制度が実施されたものの、任意・有料であるがためにこの制度の利用率は現在のところ低迷しています。また、対象となる化学物質がホルムアルデヒドに限定されているに過ぎない事を考えると、最高ランクを表示されても問題解決には至っていないと考えられます。なぜなら、ホルムアルデヒドは住宅建材に含まれる化学物質のひとつに過ぎず、他にもたくさんの種類の化学物質が使われているからです。
これから家を建てる、またはリフォームする方は、設計・施工業者と次の点を話し合い、適切な対処を施すよう心がけて下さい。

1. 敷地条件を把握し、風通しを配慮した窓の配置を計画する。
2. 家全体の換気を配慮した平面・断面の計画をする。
3. 常時有効な換気ができるよう、小窓や通気口などを施す。
4. 有害物質が少ない接着剤や放散が少ない建材などを使用する。建材においてはF☆☆☆☆(JIS規格)またはF☆☆☆☆(JAS規格)製品は低濃度とされているが、製品段階ではその規定値が保たれていないものも有ることが、当会の分析試験により確認されている。また、隠れた部分の接着剤や下地材の選択を誤るとそれも台無しとなる点に注意したい。
室内空気環境への影響が大きい内装仕上げ材、下地材には優先的に安全な材料を使用する。

■接着剤の選定
ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンの含有量が比較的少ない接着剤に水性エマルジョン系があります。しかし、水まわりや湿度の高いところでは接着力に問題を生じ易いとも言われています。
壁紙施工用でんぷん接着剤では、各メーカーでホルムアルデヒドの放散が少ない製品を販売しているので、製品データシートや試験結果等のデータを取り寄せるのもひとつの選定方法です。

ホルムアルデヒド系接着剤

尿素(ユリア)系樹脂 ユリア、ホルムアルデヒド、 合板、パーティクルボード、MDF、内装用集成材
メラミンユリア共縮合樹脂 メラミン、ユリア、ホルムアルデヒド JAS1類合板、パーティクルボード、MDF、集成材
フェノール樹脂 フェノール、ホルムアルデヒド 合板、パーティクルボード、OSB、LVL
フェノールメラミン共縮合樹脂 フェノール、メラミン、ホルムアルデヒド、 JAS特類合板(構造用合板)
レゾルシノール系樹脂 レゾルシノール、ホルムアルデヒド 構造用集成材


■塗料の選定
水性塗料=天然塗料だと勘違いされている方が多いようです。
水性塗料とはエマルション系塗料です。 エマルションというのは、樹脂を小さな微粒子にして水に分散させたものです。 この微粒子が塗装されると、微粒子同志をくっつけ合わさないと塗膜にはなりません。
ところが、この微粒子同志は、そのままではくっつき合わないので、くっつき合わせる手伝いのために、水に溶ける溶剤や可塑剤を添加します。
この水に溶ける溶剤は、一般には、セロソルブ系の物が多く、概して身体にはよくありません。 又、水に溶ける溶剤は一般に沸点が高いためになかなか蒸発して無くなってくれません。 つまり、しつこく塗膜に残留しますので、何時までも放出されます。
水系といっても、有機溶剤を普通は10%程度、ひどい物では20%位含有しています。完全に水系で有機溶剤を含まない物はほとんどありません。 一部、完全水系と称している物は、樹脂のTg(ガラス転移点)が低い樹脂をつかっているものか、あるいは焼き付けのような高温に加熱して硬化乾燥させるタイプの物です。 樹脂のTg(ガラス転移点という温度)とは、この温度以上で樹脂が柔らかくなる温度です。Tgが高いと硬い樹脂、Tgが低いと柔らかい樹脂(例えばゴムや粘着剤の様な物)を意味します。 又、水系塗料は腐りやすいので、防腐剤が入っている場合も多いのです。 この防腐剤も悪さをしている原因とも考えられます。

■木材保存、防蟻剤の選定
住宅金融公庫の木造住宅工事共通仕様書で、地盤面から1m以内の部分にあたる土台、外壁部の柱、間柱、筋交い及び下地材には防腐・防蟻の措置を講じることが推奨されています。また、薬剤に代わる耐腐性、耐蟻性の大きい材種(ヒノキ、ヒバ、コウヤマキ、ケヤキなど)を使用することも有効な手段であり、この場合には心材(年輪の中心を持ったムク材)を使用する必要があります。
防蟻剤を使用している場合は床下換気ができるよう配慮し、その際、床下空気が自宅や隣家の室内に流入しないよう、換気製品の性能と設置場所に注意をして下さい。

※VOCの発生源について
ホルムアルデヒドの発生源は建材、喫煙、暖房器具の使用等が考えられますが、その中でも著しく多いのが尿素-ホルムアルデヒド系の接着剤を使った建材や内装材です。ホルムアルデヒド以外のVOC発生源については建材、ビニール壁紙、断熱材、畳、防蟻剤など、ありとあらゆるものが考えられます。

発生源の種類
主な材料・製品
建材

パーティクルボード(接着剤)
化粧版(接着剤・原料)
壁紙(原料・可塑剤)
断熱材【発泡尿素樹脂】(発泡剤)
     【尿素樹脂バインダーガラス繊維】(接着剤)
シール剤(有機溶剤)
プラスチック配管(原料)
畳(防ダニ剤)
フローリング(木)
プラスチックタイル(原料・可塑剤)
塗料(有機溶剤・原料)
でんぷん糊(防カビ剤)
合成接着剤(有機溶剤・原料)

家具・調度品
カーペット(接着剤・原料)
タンス(接着剤、防虫剤・原料)
カーテン(難燃化剤)
暖房・厨房機器
開放型石油ストーブ
ガスレンジ(燃料、燃焼生成物)
システムキッチン(接着剤・原料)
空調機器
空調システムのダクト内壁SVOC
日用品
化粧品、事務用品、接着剤、芳香剤、消臭剤、滅菌剤など
電化製品・事務機器
掃除機(防菌剤)、コピー機、マーカー(有機溶剤)など
自動車関連製品
燃焼、排ガス、内装材など

上記のように、ガス器具や電気製品などからもVOCは発生していますが、これらを排除するのは日常生活のうえでは不可能に近いことを考えると、住宅建材の選択は重要となります。


天然素材ご使用の際の注意点
フローリング、板壁、建具など無垢の木材をご使用になる場合、他の一般建材と同一に保管・搬送されると他製品から化学物質を吸着する場合があります。
天然素材を嗜好品として採用される場合はともかく、化学物質を抑える目的でこのような素材を用いる場合は流通段階から隔離保管するなどの配慮も重要です。

 


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